ボクっ娘淫魔の巣窟 企画もの 非エロ作品 クリスマス

FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

スポンサー広告

クリスマス

 クリスマス。 

 町がネオンで明るく輝く夜の駅前繁華街。


 まったく何が悲しくて一人、

 コンビニに少女マンガ買いに行かなきゃいけないんだか。


 クソ生意気な妹のことを思い出して、ため息をつく。


 ……俺も大学を卒業間近、来年順調に行けば社会人か。


 去年はサークル仲間でワイワイやっていたが、

 流石に今年は就職活動とかで無理っぽい。


「あーあー……去年は楽しかったんだけどなー」

 ふと横を見ると、昨年サークルで飲み会をしたレストランが見えた。

 ガラス張りで、結構オシャレなお店だ。

 もう一回くらい、みんなで来たかったなー……

 とふと、店の中を見てると、ちょうど入り口から出てくる人影が見えた。

 ……ふと、後姿を見て。


(――あれ?)

 見覚えのある、頭にふわふわが付いている三角の毛糸帽子。

 ショートカットの小柄な女の子の後ろ姿で、

 白いタートルネックに、ミニスカート。

 タイツに可愛らしいウサギさんの小さな模様がポツポツと書いてある。


(……若葉?)

 去年一緒にサークルに入ってた女の子だ。

 元気で可愛い感じのムードメーカー。

 目がクリクリとして、反応が面白くてよくからかってた。


 人違いかなーと思ったが、

 ポケットから携帯のウサギさんストラップが見えた。


 七割くらいで若葉だろう。

「よぉ、若葉」

 俺が声を掛けると――


「――え?」


 ……俺は凍りついた。

 若葉の大きなクリクリとした目に――





 こんもりと、涙が溜まっていたからだ。





「……ひ、緋村……くん?」



「ど、どうしたんだよ、お前」

 俺が声を掛けると、若葉は鼻をすすりながら――


「ふぇ……ふぇぇぇ……」



 泣き出してしまった。



「お、おい……あ、お、おいって……」

 おろおろしていたが、とりあえず近づいて、話を聞いてみる。

 周囲の人から見えないように、壁となるが――


 ……ううっ、恥ずかしい。

 何だか俺が泣かせたみたいじゃないか……


 でも、このまま放っておけないし――

「と、とりあえず店入るか。店」

 俺はとりあえず、近くの飲み屋に逃げることにした。



◆ ◆ ◆





 駅前にはよく来ていたので、

 個室のある飲み屋の場所は覚えていた。


 たまたま昨日、バイトの金が来てたので、

 ふところが温かかったのは幸いだ。


 落ち着いた雰囲気の座敷の個室である。
 
 静かだし、料理も美味い。

 問題は――

「……ふられた?」

「う、うん……ふられたって言うか――」


 話を聞くと、こうだ。

 まぁ、俺も知ってる男がいて。

 若葉が、そいつのことを気にしてるってことは前々から知っていた。

 ところが。

 俺も知ってる奴だが、鈴木と言う女の子がいる。

 若葉とは真逆の大人しい清楚な女の子で、本当に性格のいいコだ。

 若葉とも仲が良い奴なのだが――

「……ケイちゃんがね、告白したいんだって言っててさ……」

「ケイ? ああ、鈴木か」

 つまり、好きな男が被ったことか?

 あれ?

「……お前、前々からアイツのこと好きだって言ってなかったか?」

「うん……」

「鈴木は知ってたんじゃないのか? お前がアイツのこと好きだって」

「ううん。言ってない……」

「え? そうなん?」

 俺には結構言ってたはずだが。

 すると、若葉はうつむいて――

「……その前に、ケイちゃんが好きだって聞いてたから……」

「…………なんつー、ベタな」

 俺はポリポリと頭を掻いて言った。

 まぁ、前々から貧乏くじ引く奴ではあったけど。

「……さっきさ、電話で連絡が来てね」

 若葉は泣きそうな顔をしていた。

「告白されたんだって……」

 うはぁ……

「……朝間に?」

「……うん……」

 朝間というのはコイツが好きだって言ってた男の名前。

 つまり、好きな男が、親友に告白したと。

「それでー……」

 俺が言いにくそうにしていると――

「……うん、付き合うんだって」

 やっぱりかー……


「……でも」

 若葉は悲しそうに笑った。

「……それは、全然、いいの……本当に、いいんだよ?

 ケイちゃん、本当に嬉しそうだったし。
 ボクだって、おめでとうって……おめでとうって……

 言おうとしたの……

 でも……でも……」

 若葉は、泣き笑いみたいな顔をして――


「ボク……思ったの」

「……思った?」




「二人が結ばれなきゃいいって……思った」


「……」


 俺が黙っていると、若葉はとても傷ついたように――


「ケイちゃんが……
 ずっと相談してて、応援してて、諦めたつもりだったのに……

 ……ボク、最後の最後で、嫉妬したの」

「……」

 
 しばらく沈黙が続き――

 そしてふと、乾いた笑いをして。


「……最低だよね、ボク」





「……何か、飲むか?」

 沈黙が続き、俺はふと声を掛けた。

「お前、オレンジサワー好きなんだっけ?」

「……うん」

 俺がおしぼりを渡すと、若葉はえへへと笑って。

「ごめんね、つまんないこと言って……」

「……気にすんなって」

 涙をふきふきしてる若葉を見ながら、ふっと思い出したように、

「俺だって、似たようなこと考えたことあるし」

「……え?」

 涙を拭き終えてから、俺に視線をむけて言う。

「……そーなの?」

「ああ」

 おかしくなって笑う。

 ふっと、若葉も笑って言った。

「そーなんだ……」

「そゆこと」

 俺はわざとおどけて言う。

「俺も最低の一人ってワケ」

「あはは。最低コンビ決定だね」

「嬉しくねえコンビだなぁ」

 酒が来た。

 若葉にサワーを渡すと、ようやく笑顔になって。

「えー、ボクみたいに可愛い女の子がついてるんだゾー?

 ちっとは喜べー!」

「へいへい」

 俺もビールをもって乾杯する。

「サイテーコンビに、めりーくるしみまーす!」



◆ ◆ ◆





 数十分後。

「えへへー……いい気分になってきたのら」
 若葉はえびす顔で、サワーを飲み干していた。

「おいおい、大丈夫か、お前。顔真っ赤だぞ?」
「うるさーい! せっかく美味しくらってきたのに、邪魔するらー!」
「……典型的な悪酔いだな、おい」

 俺がため息混じりに言うと、若葉はわざとくだを巻いて。

「ううー! どーせ、ボクなんて、どーしよーもない酔っ払いだお!
 ボクなんて、親友の不幸を願うサイテー女だもぉー!」

 コップを置いて、机にほっぺをくっつけて言う。

「……ううっ」

 やはり負い目があるのか、若葉は落ち込んでいるようだった。

「……サイテーねぇ」
 落ち込んでる若葉に、俺は言う。

「お前、サイテー奴嫌いか?」

「当たり前だお! 好きになる奴なんていないお!」

「そうか」

 俺はおどけるように言った。

「そりゃ困ったな」

「んー? 何ら?」

「俺もあるって言ったろ。そー思ったって」

「あ!」

 つい、気まずくなると思ったのかくだ巻きをやめて言う若葉。

「え、えっと、ボクが言いたかったのはそーゆー意味じゃなくって……」

「ついでに今一緒に飲んでたりな」

「いや、だからその……」

 俺がポツリと言うと、三秒くらいゆっくりと止まって。

「………ほぇ?」

 若葉は戸惑っていたようだった。



「……お前のこと、思った。フラれたらいいって」


 俺も酔いが回っていたのかもしれない。

 つい、そんなくだらないことを喋ってた。

 若葉は驚いたような顔をしていた。


「……後悔は、してる。でも、これも俺の本心だ」

「……」

 若葉は黙っていた。


「……サイテーさなら、俺の勝ちだな」


 俺は、若葉にそんなことを、言っていた。


 ……本当、何で言っちまったんだか。


「……いつから?」

「んー……結構始めの頃かな。一目惚れみたいなもんだったから」

「んじゃあ……ボクが、相談してた時も……?」

「……全くなかった、とは、言えないな」

「……」





 きまずい沈黙が流れてた。




 何とも言えない空間だった。





「……出るか?」

「え?」

 俺が言うと、若葉は驚いたように言った。

「これ以上、俺と飲んでも、酒、マズイだろ?

 それにホラ、俺、狼になっちゃうかもしれないしさ。

 知ってるだろ?

 落ち込んでる時に優しい言葉かけられるとクラッてきちまうって」

「……」

 まだ黙り込んでる若葉に、俺は笑いかけた。

「悪い男に引っ掛かりたくないだろ? 心の傷も癒えてないってのに」

「……」

「んじゃ、俺のおごりってことで――」

 俺が立ち上がろうとすると、


 そっと、

 若葉の手が、俺の上に乗せられた。


「……い」 

 若葉は顔を真っ赤にして……

「いい…よ……」


「……え?」

 酒を飲んだ為か、とろーんとした瞳の若葉の顔がとても色っぽくて。

「いい…よ……緋村くんが……」


 ミニスカートから、覗く足が色っぽい……



「ボクで、いいんなら……」




「……」



 俺はそっと、若葉の近くによって――

 顔に顔をくっつけると、


「……っ」

 若葉は怯えたように目を瞑って、

「……」


 俺は、ほっぺにキスをした。


 いい匂いが、した。


「……え?」

「だから、悪い奴に引っかかんなっての」

 俺は苦笑した。

「酒の勢いでしたら、後悔するぜ?」



「……あう」

 若葉は、すぐに顔を真っ赤にして……

 俺は、つい愛おしくて頭をそっとなでた。

「もし、酒の力なしで、いいんなら誘ってくれ。

 サイテー野郎でよかったらな」

「……うん」

 
 俺と若葉は店から出た。

 雪が降り始めていた。


「寒いはずだ。雪降ってる」

 俺がぼんやりと空を見上げてると――


 俺の頬に、ちゅっと、柔らかい感触がした。


「……えへへ。されてばっかりじゃ、アレだから、さ」

 恥ずかしそうに、若葉は言う。


「い、一応”ふぁーすときす”なんだからね……ご、誤解しないでね」

「ファーストキスもまだなのに、酒の力でヤケになるなよ」

「う、うるさいな……」


 俺がからかってやると、若葉は照れ笑いを浮かべて言った。


「……またね」

「ああ」


 若葉は電車があるから、と駅まで元気に走っていった。

 俺も帰ろうとして――


「あ」

 ふと気付いた。

「マンガ、買えねえや」


 最低な奴等の、最高のクリスマスに、幸いあれ。




-THE END-

企画もの 非エロ作品 クリスマスCOMMENT(0)

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。