ボクっ娘淫魔の巣窟 2008年11月

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白星 -愛と欲-

俺が守りたかったのは、何だっただろう。
世界? 平和?
それとも淫魔に襲われている人々?

そんなもんじゃない。
俺が、本当に救いたかったのは――

◆ ◆ ◆


古びた教会。
屋根が砕け、月明かりが差し込む。
そして、降り注ぐ雪。

空は晴れているというのに、
サラサラと、白い雪は降り続けている。

白星――と呼ばれる現象だ。

晴れているのに雪。
雪なのに晴れ。

矛盾し、相反するはずの存在が確かに存在している。
伝承によれば、この現象が起こった時、必ず生れるものがある。

争い。
憎しみ。

そして――

「……――」
俺の名を優しく呼ぶ声が聞こえた。
絢爛豪華とは言いがたいが、自分の故郷の見慣れた教会。
ここにいるのは俺と――

「――もう、どこに行っていたの?」
ウェディングドレスを着た一人の少女だけだった。

その姿はあまりに美しく……
見慣れたはずのその姿が、まるで一流の芸術家が生み出した女神像のように見えた。

「もうすぐ式が始まるわ。
 ふふっ、みんなびっくりするでしょうね……私がこんなドレス着てるのを見たら――」

一年前まで普通にあったはずの光景。
幼馴染のアイツとずっと笑い合って、俺が守りたいものが確かに存在していた――
本当に幸せだった、あの頃。

だが――
俺は、剣を抜いた。

「え?」
「……ざけんな」

俺は歯を食いしばって言った。
口元から血が滴り落ちるのが分かった。

「どうしたのよ? そんな怖い顔して……せっかくの結婚式なのに。
私だってこの日をずーっと楽しみにしていたのよ」

満面の笑顔。
俺がずっと見慣れていたはずの笑顔。
それを目の前の少女は――いや、少女の形をしたそれは形作る。

「――てめえが……」

一年前のあの時のように。
俺が目の前で、アイツを犯され、殺された――あの時のように。

「――――っっっ!!!」
俺は剣をふるって目の前の少女を切り裂く……!

目の前にあった少女の姿と故郷の教会の光景は――
ガラスが砕けたかのように破壊され、元の廃墟へと戻った……

「――あはははっはははっ♪ やーねぇ。
 恋人を切るなんて、どうかしてるんじゃない? 淫魔ハンターさんっ♪」

先ほどまでウェディングドレスを着ていたはずの少女は、
コウモリの羽に露出度の高いレオタードを着た、妖艶な姿の女性に変わっていた……

一年前、俺の前で、アイツを――俺の恋人を食った淫魔。

「淫魔が剣じゃ殺せないって分かってたんでしょう?
 くすくすくす……バカねえ、頭に血ぃ上らせちゃって……そんなことじゃレディ一人エスコートもできないわよ?」
 
「……てめえは女じゃねえ、ただの薄汚ねえ、ただの化け物だ」 

「心の狭い男ねえ……くすくすくす。たかだかメスが一匹死んだだけでしょう?
 理解できないわぁ……それがなくなったってまた別の一匹を探せばいいじゃない? その女がどれくらいのテクを持ってたか知らないけど、気持ちよくなりたいんなら私が相手になってあげるわよ? そんな、たかだか……」

「……黙れ」

「はぁっ?」

「……黙れって言ってんだよ」

「!」

 淡々と自分でも酷く無感情に言った。
 それが一瞬だけ、淫魔を黙らせた。

「……ふん、バカみたいね……人間なんて。それが愛ってわけ?誰かを思う心? そんなもの綺麗事でしかないわ。男が欲しいのは、カ・ラ・ダ」

一瞬うろたえたのを虚勢を張るかのように、淫魔は蟲惑的に体をくねらせて言った。
だが俺にはそんなものは効かない。この悪魔には――

「――っ!!?」

俺はそこで気付いた。
その淫魔は過激なコスチュームのままで。

――アイツの姿になっていたのだから。

◆ ◆ ◆


俺が愛したのは、なんだったのか。
もし愛した人と容姿もしぐさも全て同じで。
中身の全く違うものが相手だったとしても――

それは愛と呼べるのだろうか。
いや――

恋人の姿となったサキュバスを前に、俺は苦戦を強いられる他なかった。
耳元で愛を囁かれ、反撃もままならず、全てを奪われようとしていた。

「ふふっ……どうしたの? 反撃しないの」

恋人の姿となったサキュバスは、俺が愛した娘の顔のまま、俺を見下すようにそう言った。
俺は、相手の魅了の前に、精神を打ち砕かれようとしていた……

「そうね……人間にしては頑張った方じゃない? でも所詮あなたたちは私たちのエ・サ。私たちサキュバスに勝つことなんて出来やしないのよ」

「……」

「どんな人間も快楽の前ではひざまずくしかないの……愛だの何だの言っても所詮あなたたちも獣よ。ただ快楽の為に腰を振り、相手に種をはらませることしか考えていない。そんな愚かしい種族なのよ」

 俺は奥歯かみ締めた。

 ……パリンとガラスの砕ける音がし、口の中に血の味が広がった。

「さぁ……私の中で全てを打ち放ちなさい……」

 サキュバスの中で、俺のペニスはどんどんを追い込まれていく……
 もう間もなく、俺は射精し、この女に全てを吸い尽くされるだろう……
 だが――

「……くっくっく……」

「?」

「そうだなぁ……俺たち人間は本当に愚かかもなぁ? 愛した奴のこともろくに忘れられず、どうしようもなく惹かれて、結局はこの様だ……だがな」

 俺はサキュバスの肩を抱いて、にらみつけた。

「てめえごときが、人間笑うんじゃねえよ」

「……!」

 サキュバスは小さく息を飲んだ。

「な、何を強がってるのよ……も、もうすぐあなたは――」

「ああ、死ぬなあ。だが、俺が射精したらてめえも死ぬんだよ」

「何ですって……っ!?」

 俺は口を開けて見せた……
 そこには俺の所属するハンター協会が生み出した一つのガラスのカプセルが噛み砕かれていた。

「”Tear of Puritan”……"清教徒の涙"って言ってな。人間の精液を、サキュバスにとっての猛毒に変え、たった一度だけ、サキュバスを性的快楽以外の最高の苦痛で殺すことができる新兵器……まぁ、その代わり、その人間も半日もすればお陀仏だろうが……まぁいいさ。俺の人生なんざ、てめえに恋人食われた時点で終わってる……」

「そ、そんな……ひっ!?」

 逃げようとするサキュバスの肩をつかんで、俺は笑った。

「逃げるなよ? お前の大好物の人間の精液だろ? 遠慮なく受け取れよ……」

 サキュバスは今更恐怖を感じ始めたらしい。
 一丁前に、てめえの命は惜しいらしい。

「……てめえらも怖いんだなぁ。
 死の恐怖って奴は……てめえらが散々ばら撒いてきたもんをてめえで感じるのはどんな気分だ? あ? どうだよ、てめえが散々バカにしてきた人間に殺されるのはどんな気分だ? ああ? どうした? 人間は愚かしいんだろ? 男なんてみんなバカで、てめえらに掛かれば何でも思い通りになるんだろ? ああ? とっとと俺を魅了して離れさせてみろよ」

「……や、やめて……」

「――命乞いならてめえが散々殺してきた人間全員に言いやがれ」

 確かに人間は快楽に勝てないかもしれねえ。

 けど俺は――絶対に負けてやる気つもりはねえ。

「死ねよ……化物……」 

俺はにやりと笑って、サキュバスの中に一斉に中出ししてやった。


「――あ、あああアアアアあアアアああアアアアアアアあああああああああああっ!!!!!!」

毒はすぐに効いてきた。
サキュバスの皮膚は解け、全てがただの肉塊になっていく……

「……」

偽者とは言え、恋人の姿をした化物の最後……

だが俺は……目を逸らさなかった。

全てが終わった。

そして――俺も。

「……っ!!!!!!!!」

口から大量の血が吹き出た。

目眩がし、体が言うことを効かない……

まぁ、俺には当然の末路か……

「……」

守れなかった恋人の名前が口から滑り落ちた……

こんなくだらない俺に愛を捧げてくれた娘の名前……あいつを失った時点で俺の人生は当に終わっていた……

俺はただ、自分の人生を終わらせたかっただけかもしれない……


(……やっと、眠れる……)

俺はそのまま意識を失っていった……










「――っ! ――っ!!」

誰かの声が聞こえた気がした。

















「――っ!!!!!!」
俺の名前を、呼んでる……?

まさか、俺はすでに――






「起きんかバカたれ!」





「――っ!?」

目が覚めた。

そこは、俺が所属していたハンター協会の医務室だった。

そして、目の前には涙目になっている後輩ハンターたちの姿があった。

「……ギリギリじゃったな」

 所属していた医者が大きなため息をついて言った。

「あの薬の副作用を止める薬は製造法も分からず、残っていたサンプルだけじゃった……

 イチかバチかだったが……何とかなった」

「……」

何だ、そのまま死なせてくれても良かったのに……

俺がそんなことを思っていると、不意にまくらが襲い掛かってきた。

「――このばかちんがぁ!」

「お、おいやめろっ! やめろって!」

知り合いの後輩ハンターの女の子が枕を持って叩きつけてくる。

「どんだけ心配したと思ってるんですか! 勝手に思い詰めて、勝手に死にに行って……! そんなことして、先輩の恋人さんが喜ぶとでも思ったんですか!? そんな…そんなことして……」

枕の攻撃が不意にやんだ……

後輩ハンターを見ると、両目から涙がぽろぽろ溢れていた……

「先輩の……バカぁああああああああああ!!」

後輩ハンターは俺の胸元に顔を埋めると、ぐすぐす泣き出した。

「全くじゃ、死んでどうする」

医者が言う。

「死ぬ覚悟など誰でも出来る。生き残る覚悟がなければ、ハンターなどするべきではない」

「……」

俺は胸元でなく少女の頭を撫でた。

復讐も終わり、何の意味もなくなったはずの世界で、俺は生きていかなければならない……でも。

(……悪い、もうちょっといいか?)

俺は窓の外から見える、青空の雲の上にいるだろう、アイツの姿を思い浮かべながら、そんなことを思った。




THE END

他の娘SS 白星-愛と欲-COMMENT(2)

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